もう花粉に悩まされたくない!③~生活面での対策とセルフケア
3回にわたって花粉症について連載してきました。
最終回の今回は、花粉症のつらさを少しでもやわらげるためにできる対策やセルフケアなどについてまとめてみます。
花粉を取り込まない工夫
生活の中でできる花粉症対策としてはまず、物理的に花粉を体内に入れないようにすることです。
外出時にはマスクやメガネをつけるといったことのほか、家の中に花粉を入れないようにする工夫などがあります。
特にマスクの着用は、花粉の飛散の多い時に吸い込む花粉の量を1/3~1/6に減らす効果があるとされています。
また、花粉症でない人でもマスクは有効。吸いこむ花粉の量を少なくしておく方が、今後、花粉症になるリスクを抑えられると考えられるからです。
目に対しても、メガネをするだけで目に入る花粉の量は40%減、花粉症用の防御カバー付きメガネなら65%減少すると言われます。このほかに有効な花粉対策には、次のようなものがあります。
・飛散が多い時は窓を開けない。換気のために窓を開ける場合、レースのカーテンをすると、部屋に入ってくる花粉を減らすことができる(カーテンの洗濯は必要)
・布団や洗濯物を外に干さない
・掃除をこまめにする
・空気清浄機を使う
・外出時の服装はツルツルした素材のものにし、帰宅時に服などについた花粉を払ってから入室する。(ウール素材は花粉が付着しやすい。)また、顔などについた花粉を洗い流すため、すぐに洗顔やうがいをする
日常でできるセルフケア
花粉を物理的に取り込まないことのほか、花粉を受け取る身体の側のコンディションを整えることも、花粉症対策として大切です。
鼻のケア
・鼻洗浄・・・鼻に入った花粉を洗い流す効果あり。「鼻うがい」について紹介した記事は(https://physical.ne.jp/archives/252)
・鼻の粘膜の保護・・・鼻をかみすぎて鼻が荒れてしまったら、白色ワセリンなどを塗る。鼻をかむのに保湿ティッシュを使う
・室内加湿・・・鼻腔に炎症があると粘膜機能が低下するので、室内を加湿して水分を補う。空気が乾燥している場合にはマスクが有効
目のケア
・目の洗浄・・・水道水では目を傷めることもあるため、市販の人口涙液を使用
・目の疲労の回避・・・テレビ、パソコンなど目の負担になることを避ける。目を酷使したら休ませるなど
免疫力を保つ
花粉症のようなアレルギー反応は、免疫機能のバランスの崩れ、免疫の低下がその大きな原因と考えられます。
正常な免疫力を保つためには、睡眠をよくとること、規則正しい生活習慣やバランスのとれた食事、適度な運動などが重要。ありきたりのアドバイスとなってしまいますが、これに尽きるようです。
タバコを吸わない、お酒を飲みすぎないといったことも大切。
これらは免疫力のためでもあり、また、鼻の粘膜を正常に保っておくためでもあるとか。タバコの煙は鼻の粘膜を刺激し症状を悪化させる可能性があり、飲酒はアルコール分解時に発生する物質がアレルギーを引き起こすヒスタミンの分泌を促すと言われています。
なぜ花粉症になる人とならない人がいる?
遺伝的要因
ひとつに考えられるのは、アレルギー体質かどうかです。
もともとアレルギーの素因を持つ人は、花粉症に限らず、様々なアレルギーを引き起こしやすいと言われます。これは生まれもっての体質、遺伝的要因だということができます。
環境要因
もう一つの大きな要因が、環境です。というのも、花粉症の人は年々、増加していることから、遺伝的要因だけでは説明がつかないからです。
環境省(「花粉症環境保健マニュアル2022」)によると、花粉症患者の増加要因として考えられるのは、「飛散する花粉数の増加、食生活の変化、腸内細菌の変化や感染症の減少など」が挙げられています。
日本では1970年代前半から花粉症の報告が急増していますが、欧米では昔から花粉症のような類似疾患が多く報告されていたらしく、日本人の食生活などの生活習慣の欧米化が花粉症の増加のひとつの要因ではないかという見方もあるそうです。
さらに、空気中の汚染物質、喫煙、ストレスの影響、都市部における空気の乾燥といったものが「花粉症の症状を悪化させる可能性がある」とも。
このほか、いくつかの製薬会社のウェブサイトでは、都会のアスファルト量が多いエリアの方が、花粉が地面に落ちて粒子が割れやすく、中からアレルゲンとなる成分が放出されやすいことや、土と比べてアスファルトの地面からは何度でも空気中に飛散しやすいこと、排気ガスに含まれる微粒子と一緒に花粉を吸いこむとアレルギー反応が出やすいことなども指摘されています。
おわりに
花粉症--それは自分自身の体質、生活習慣、そして住んでいる場所の環境やストレス具合など様々な要因が絡み合い、症状という形をとって何らかがおかしいというサインを私たちに示してくれるもの。
都市化や花粉の飛散量の増加といった環境要因は、私たち個人にはどうにもできないことかもしれませんが、免疫を整えることを意識しつつ、それもストレスをためない程度にして、医療の力を借りながら、少しでも快適に花粉の季節を乗り越えられるようになればいいですね。
参考ウェブサイト
環境省「花粉症環境保健マニュアル2022」 https://www.env.go.jp/content/900406385.pdf
エスエス製薬 https://www.ssp.co.jp/alesion/hayfever/
第一三共ヘルスケア https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/content/newsletter_240216.pdf