今こそ見直したい 緑茶のチカラ
新茶の季節です。茶摘みの歌にある「夏も近づく八十八夜」とは立春から88日目のことを指し、今年2024年でいえば5月1日でした。
緑茶には様々な健康効果があるとされ、今が旬の新茶にもまた、二番茶以降のお茶とは異なる独特の特徴があります。抹茶や緑茶などの日本茶ブームが海外で起きている今、私たち日本人も改めて緑茶の魅力を再発見しませんか。
緑茶と健康効果
何千年もの間、中国や日本で薬として用いられてきたお茶。
中でも緑茶は、風邪の予防やダイエット、血圧や血糖値の抑制などにも効果があると言われています。
厚労省では、いまだ研究途上で確定した結論にいたっていないとしているのですが、効果がある可能性を示す調査報告が出ているのも事実。さらに多くの研究が進み、良い結論が出るのを待ちつつ、ひとまず緑茶の成分とその作用について、代表的なものを見てみましょう。
カテキン
ポリフェノールの一種であるカテキンは、緑茶の渋みの主成分。「日本カテキン学会」によると、カテキンの効果、作用には次のようなものがあるとされています。
・抗菌・殺菌作用
・抗ウイルス作用
・活性酸素除去作用
・コレステロール低下作用
・体脂肪低減作用
・抗アレルギー効果
・虫歯に対する効果
上記の中で、まず注目したいのが「活性酸素除去作用」つまり抗酸化作用ですよね!
この言葉を聞けばアンチ・エイジング効果を期待してしまいます。
また、ストレスに弱い肝臓をいたわるのにも緑茶が良いと言われています。肝臓を攻撃する活性酸素を抗酸化力のあるカテキンが消去してくれるからです。
さらに、緑茶にはビタミンCなど抗酸化作用のあるビタミン類も豊富に含まれているため、カテキンとの相乗効果でその抗酸化力は“ピカ一”の飲み物だといえそうです。
テアニン
お茶に含まれるアミノ酸のうちの半分以上を占めるのがテアニンです。アミノ酸といえば、うま味成分。このテアニンを含むアミノ酸に有機酸、ポリフェノールなどが相まって、お茶のうま味を形成しています。
テアニンにはリラックス効果があり、ストレス緩和や睡眠の質を改善する効果などが期待できます。
ところで、緑茶にはカフェインが多く含まれることは、広く知られるところ。
お茶を1杯飲むと15~30mgのカフェインを摂ることになり、かなり強い興奮作用が表れるはずです。なのに実際には、お茶で一服するとスッキリとすると同時に、ホッとしますよね。これは、テアニンの仕事によるもの。テアニンがカフェインによる興奮を抑制し、劇的な興奮を抑えて適度なリフレッシュにとどめていると考えられます。
緑茶を世界展開する「伊藤園」の研究では、テアニンを飲んだ人間の脳波には、リラックス状態の時に多く現れるα波が上昇することが分かったそうです。
(伊藤園・お茶百科
https://www.ocha.tv/components_and_health/benefits_greentea/theanine/)
新茶の特徴
さて、チャノキの新芽からつくられるのが新茶、一番茶です。
冬の間に養分を蓄えて春に芽吹いた新芽が4月下旬~5月中旬にかけて摘み取られ、その茶葉を淹れて飲むのが新茶。「八十八夜に摘まれたお茶を飲むと長生きできる」とも言われる縁起物です。
二番茶以降のお茶と比べた特徴といえば、テアニンが2倍ほど含まれるためにお茶のうま味、甘味が濃厚。テアニンゆえに、リラックス効果がほかのお茶よりも高くなります。
一方、カテキンやカフェインは二番茶以降よりも少なく、苦さ、渋さが少ないのが特徴です。香りも新緑のようなさわやかさがあり、二番茶以降には香りはどんどん弱まります。
海外での緑茶人気
農水省によると、日本茶の輸出量はこの10年間で3倍近くにまで増えています。
背景には和食ブームの影響や世界での健康志向の高まりがあるとのこと。少し前に世界で抹茶ブームが起きていましたが、抹茶といっても抹茶ラテや抹茶風味のスイーツなどが中心でした。
また、紅茶に代わり緑茶、グリーンティーの方も認知され始めましたが、それも甘くアレンジされたドリンクが人気だったものです。ところがヘルシーなものがより好まれる最近では、甘くない抹茶そのものや無糖の緑茶も売れるようになってきているようなのです。
アメリカのシリコンバレーでは、企業が福利厚生の一環で社内で飲料を無償提供する「ワークコンディショニング飲料」として、伊藤園の「お~いお茶」など日本の無糖のペットボトルの緑茶が取り入れられ、社員に浸透しているとか。
仕事の集中力が途切れてきたタイミングなどで緑茶を飲み、スッキリして仕事に戻れるというところが人気の秘密のようです。
日本人にしてみれば、休憩にお茶を飲むというのは以前からある習慣ですが、アメリカではこれまで、そうした時にはコーヒーやエナジードリンクなどが飲まれてきたのです。
エナジードリンクでは砂糖のとりすぎになりやすく、エネルギー切れになった時との気分の落差が激しくなってしまいますが、無糖の緑茶飲料にはそうしたデメリットがなく、テアニンとの相乗効果による穏やかなカフェイン作用が受け入れられていると思われます。
ガンを予防するか
緑茶がガンの予防に効果があるのか?この点についても注目度が高く、いくつもの研究がなされていますが、まだはっきりと「効果あり」とは言えない段階のようです。
ただ、厚労省調査による「がんによる死亡率が少ない市町村ランキング」で、男性の2位と3位、女性の1位と2位に静岡県の掛川市と藤枝市という緑茶の有名産地が入っていることから、緑茶を飲む習慣と何か関連がありそうだと言われているところ。
また、緑茶を飲む習慣と子宮内膜ガン、肺ガン、卵巣ガンなど一部のガンのリスクを下げる可能性の関連なども一部の研究から指摘されているようです。
(日経新聞NIKKEI STYLE 2016/10/10 https://www.nikkei.com/nstyle-
article/DGXMZO07926430T01C16A0000000/
同21/8/21 https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXMZO74851560X10C21A8000000/)
今後の研究調査の進展に期待したいですね!
<参考>
厚労省 https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c04/28.html
日本カテキン学会 https://www.catechin-society.com/effect_07.html
ハルメク https://halmek.co.jp/culture/c/hobby/4868
@DIME https://dime.jp/genre/604629/