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2024.4.21 ,

免疫力アップ、骨密度アップに日光浴?!紫外線の意外な健康効果

日焼けはしたくない、お肌に悪いから……そんな方が多いことと思いますが、紫外線には健康にとって有益な側面もあることをご存じでしょうか?紫外線はお肌の大敵!と危険視しすぎず、ほんの少しお日様を浴びてリラックスしてみてもいいかな――本記事で、そんな風に思っていただければ幸いです。

春から気をつけたい日焼け

肌老化とその対策については、こちら(https://physical.ne.jp/column5)に詳しくまとめました。お肌に表れるシミやたるみといった老化現象は、8割が紫外線が原因の「光老化」。肌を老化させるのは、加齢のせいよりも紫外線の方がずっと大きいということで、たとえ年齢が若くても、日光の浴び方によっては肌老化が進んでしまいます。

そこで大切なのが、紫外線対策。日焼け止めクリーム、肌を露出しない服装、日傘などで直接的な日焼けを防ぐのに加え、紫外線によって受けたダメージの回復を助けるようなスキンケア、ビタミンCなどの栄養素を十分に含んだ食事、サプリメントの活用、そして十分な睡眠も大切です。
とはいえ、日焼けの心配ばかりしていては楽しくありません。何より、日光を浴びることは心身にとってよい影響もあるのです。

日光に当たるメリット

紫外線によるお肌へのダメージばかりが注目されがちですが、人間の健康にとって日光を避けすぎることにはデメリットもあります。適度な日光浴には、次のような様々な効果があることが分かっています。
・骨を強くする
・免疫力アップ
・ガンの予防
・幸せホルモン分泌
・睡眠の質の向上
・生活習慣病の予防
このうちのいくつかは、太陽光の紫外線が人の体内でビタミンDを合成するのを助けるという働きに起因しています。

紫外線とビタミンD

カルシウムの腸での吸収を高めて丈夫な骨をつくったり、免疫細胞であるマクロファージを活性化して免疫機能を高めたりする働をもつビタミンD。成長期の体にとってはくる病の予防、正常な骨格の形成といった点で大切な必須のビタミンです。成人にとっても、骨密度を高めるほか、大腸がんや乳がん、前立せんがんなどの予防にも効果があるとされています。
食物ではきのこ類やサケ、イワシ、サンマといった魚から摂取できますが、必要量(1日10~25μg)を食事だけでまかなうのは、実はなかなか難しいところ。ところがなんと、紫外線が体内のコレステロールをもとにビタミンDを生成するのを助ける働きをしているというのです。人類は日光に当たることで、ビタミンD欠乏症から免れてきたと考えられるのです。
近年は美白ブームやコロナ禍での外出自粛などのために紫外線を浴びる量が少なく、日本人にビタミンD欠乏症の人が増えているのだとか。サプリメントで補給するのも手ですが、日本人にとってビタミンDは伝統的に、食べ物と太陽光でまかなえていた栄養素だということを見直してみても良いかもしれません。

肌ダメージを抑えつつ太陽の恩恵を受けるには?

日焼けはしたくない。けれど、健康に良い程度の紫外線は受けたい。この2つの考えは両立するのでしょうか?

太陽からの紫外線には、日焼けというダメージを与えシミなどの原因になるものと、ビタミンD生成に関わり体に有益なものとがあり、いずれも同じ波長域に属しています。つまり、日焼けのもととなる波長の紫外線をカットすれば、ビタミンD生成に必要な波長の紫外線も弾いてしまうというわけ。とはいえ、日焼けのリスクを負わなければ紫外線の恩恵も受けることができないというわけではありません。皮膚にダメージを与えない程度の“適度な紫外線量”を探るということがキモとなりそうです。

国立環境研究所 地球環境研究センターによると、体内でのビタミンDの生成量は、皮膚の露出面積が大きいほど、その面積に応じて増加するそうです。日焼けの観点からは、紫外線にさらされる面積の大小よりも時間の長さの方が影響するはず。そうなると、なるべく日に当たる体面積を大きくして、必要最低限の時間だけ日光に当たると良いのでは?と考えられます。

紫外線量は国内でも、北海道と沖縄では大きく違います。あるいは、同じ地点でも季節によって、時刻によっても変わります。そこで、一定のビタミンD生成に必要な日光浴時間が時季と場所ごとにわかるウェブサイトがあります。先に挙げた「国立環境研究所 地球環境研究センター」です。https://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/index.html

関東では、顔と手だけ10分ほど日光を浴びればOK

同ウェブサイトを見てみると、例えば10㎍のビタミンD生成するのに必要な日光に当たる時間について、横浜で、4月下旬の場合「肌の露出面積600㎠で10分、1200㎠で5分」と分かります。(https://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/yokohama_climatology.html
肌面積600㎠とは、「顔と両手の甲を水平に置いた場合の面積」とのこと。それに加えて、両腕、脚など日に当たる肌の露出面積を倍にすれば、同じ量のビタミンDを生成するのに必要な時間は半分で済むというわけ。
または、長袖シャツ、長ズボンを着て手と顔を出している場合、関東地域では、「5月~8月なら10分~30分以下/12月~2月なら40分~2時間以下がおススメ」だとか。https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/79/04-09.html

注意してほしいことがあります。まずは、ガラス窓越しに日光を浴びてもビタミンDは合成されないこと。また、日焼け止めを塗っている場合、SPF30で皮下でのビタミンD産生は5%以下に落ちてしまうということです。(環境省「紫外線環境保健マニュアル」15ページ https://www.env.go.jp/chemi/matsigaisen2020/matsigaisen2020.pdf

手と顔だけの日光浴で10分程度……それくらいならできそうでしょうか?それとも、日中は基本的にメイクをしているため、現実的ではないでしょうか?休日など朝に時間がある時に、起きてすぐにメイクをせずに、ひとまず太陽光を浴びる時間をつくる。そんな感じで時折、日光浴をしてみてはいかがでしょうか?

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