飛行機や避難所だけじゃない 気をつけたいエコノミークラス症候群
今年元日の大震災で、再び「エコノミークラス症候群」への注意が呼びかけられています。でも実は、エコノミークラス症候群は、飛行機のエコノミークラスや避難所といった特殊な環境にある人にだけ起きるとはかぎりません。死に至る可能性もあるエコノミークラス症候群。今一度、原因と症状、予防のためにどうすればよいかをおさらいしましょう。
エコノミークラス症候群とは
飛行機のエコノミークラスなど狭い場所で長時間、同じ姿勢でじっとしていることで発症の可能性が高まるエコノミークラス症候群。飛行機の場合は、トイレに行く回数を減らすために水分をあまりとらないようにしてしまうことも、大きな原因となっています。
エコノミークラス症候群は、上に描いたような条件から足の血行が悪くなり、血液がドロドロの状態となることによって血のかたまり(血栓)ができてしまう結果、起こります。
その血栓が血流に乗り血管の中を流れて行って、肺の血管に移動してしまうと、突然、肺の血管がつまってしまいます。こうなると呼吸困難や低血圧を引き起こし、最悪の場合はショック状態となり死に至ることもある恐ろしい病気です。
飛行機にかぎらず、災害の被害にあい避難所やマイカーに寝泊まりしている人にも同様の症状が起きています。ほかにも、長距離ドライバーやタクシー運転手などにも見られます。6時間以上の長時間、同じ姿勢で座り続け、水分補給も控えめな人は、エコノミークラス症候群を発症する可能性があるわけです。デスクワークやゲームに没頭する人も、要注意です。
どんな症状?特徴的な初期症状
血栓ができてエコノミークラス症候群を起こすときの症状には、次のようなものがあります。
①片方の足の腫れ/変色(赤み)/だるい/痛みなど
②息切れ/胸の痛み/ふらつき/めまい/冷や汗/失神など
①は、足の静脈に血栓ができている場合に出る症状です。片足のみに表れることが多いようです。
②の症状は、足の静脈にできていた血栓が肺へ移動してつまらせている状態です。
症状の出方には個人差があります。長時間ほとんど動けない環境で、普段にはない上記のような症状がみられた場合には、要注意。
エコノミークラス症候群にかかってしまった場合には、血栓を溶かす薬の服用や、外科手術で血栓を取り除くといった治療を受けます。
こんな人は特に注意を
血液の濃度が高く、血栓ができやすい次のような人が発症しやすいとされています。
・高齢者
・足に静脈瘤がある人
・生活習慣病のある人
・経口避妊薬を飲んでいる人(ホルモンの関係で血液が固まりやすい)
・妊産婦
・子宮筋腫のある人
・タバコを吸う人
など。
予防策は、ちょっとしたことで
エコノミークラス症候群になってしまうポイントは①長時間、同じ姿勢で血行が悪くなる、②水分不足で血液がドロドロになる――この2つ。そこで、運動する場所がなくてもできる足の体操やマッサージ、こまめな水分補給が予防のために有効です。
厚労省のウェブサイトでは、予防策が下のように記されています。
1.ときどき、軽い体操やストレッチ運動を行う
2.十分にこまめに水分を取る
3.アルコールを控える。できれば禁煙する
4.ゆったりとした服装をし、ベルトをきつく締めない
5.かかとの上げ下ろし運動をしたり、ふくらはぎをもんだりする
6.眠るときは足を上げる
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07384.html)
アルコールを控えるとありますが、利尿作用が高く体内の水分を排出してしまうコーヒーなども、控えた方が良いと言われます。ゆったりとした服装、ベルトをゆるめるのは、血流が悪くならないようにするためです。
日本赤十字社熊本管理センターは、YouTubeでエコノミークラス症候群予防のための足首の体操とマッサージを紹介しています。この中から、座ったままでできる簡単なものを紹介します。
(https://www.youtube.com/watch?v=kYjiJvda2_A&t=18s)
1.足指でグー・パー運動(足の指をぎゅっとむすぶ・指の間を開ける)
2.つま先・かかとの上げ下ろし(足の甲の側の足首をのばす・かかと側をのばす)
3.足首回し(内回し・外回し)
4.ふくらはぎをマッサージ
5.いすに座った状態で、片足の甲で反対の足のふくらはぎをたたく
6.いすに座った状態で、脚の骨を下から心臓の方に向かって指でさする
7.ふくらはぎをもむ
「足は第二の心臓」と言われるらしく、エコノミークラス症候群防止のためには特に、ひざから下の筋肉を動かすことが大切だということです。
エクササイズは万人むけ
上記の予防策に加え、横になって行うストレッチやその場での足踏み運動、適度な散歩なども、エコノミークラス症候群の予防のためには有効です。それほどの長時間ではないにしても、ずっと同じ姿勢で過ごすことは疲れのもとであり、健康的ではありません。被災者にかぎらず、デスクワークなどで体を動かすことが少ない方にも、先に紹介したエクササイズはおすすめできます。足回りのストレッチや足指を鍛えることは、ケガの防止や足のシェイプアップにもつながります。ぜひ日常に取り入れてみてください。