日本人に足りないもの、「睡眠」。美と健康に、眠りは大切!
健康法についてさまざまな情報が飛び交う現代。多種多様な食材の栄養価や運動法などが紹介され、免疫力アップ、病気予防、アンチエイジングなどのために、積極的に情報収集しては取り組む人が多いようです。そんなバラエティに富んだ情報の中で、必ず言及されるのが「十分な睡眠」ではないでしょうか。「‥‥‥そして十分な睡眠をとることが大切です」などと、さらっと付け加えたように言われることが多いものです。
そう、睡眠の大切さは、言われるまでもなく誰もが認識していると思います。とはいえ、分かっていてもなかなか十分にすることが難しいというのが現実ではないでしょうか?
厚労省は昨年末に「健康づくりのための睡眠ガイド2023」をまとめました。https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
今回はこのガイドを参考に、睡眠がなぜ大切なのか、必要な睡眠時間、睡眠不足のデメリットなどを紹介していきます。
睡眠はなぜ大切?
睡眠の役割とは、言わずもがな、心身の疲労の回復、成長、そして記憶の定着と強化といったことが知られています。
睡眠不足が続くとどうなるか?
誰もが経験的に知っていることとしては、
・日中に眠くなる、疲れを感じる
・作業や勉強の効率が落ちる
・注意力や判断力が低下し、ミスや事故が増える
――こうしたことが挙げられます。近年は過労死の問題にからみ、睡眠不足とうつ病の関係も知られてきています。さらに、肥満や高血圧、免疫力の低下などに加え、
・2型糖尿病
・心疾患
・脳血管疾患
・認知症
――などの発症リスクが、極端な睡眠不足により高まることが近年の研究で明らかになっています。そしてなんと、睡眠時間6時間未満では死亡リスクが上昇するという報告も。睡眠不足は、これほどまでにリスクの高いことなのです。
日本人は睡眠不足
さて、では睡眠時間は具体的に何時間くらいとるのが良いのでしょう?
興味深いデータがあります。
経済開発協力機構(OECD)による2021年の調査では、日本人の睡眠時間は調べられた33カ国の中で最も短かったということです。この調査での日本人の平均睡眠時間は7時間22分。OECD加盟国の平均は8時間28分で、日本は1時間も短いことが分かります。
直近の話題でいきましょう。睡眠時間や眠りの深さを計測するアプリ「ポケモンスリープ」の利用者のデータを調査したところ、世界7カ国のうちでやはり日本人が最も短かったとの報道。最も長かったのがフランスで6時間47分、日本は5時間52分だったそうです。
https://mainichi.jp/articles/20240201/k00/00m/100/211000c(毎日新聞2024/2/2)
厚労省のガイドでは、個人差はあるものの、成人で6時間以上(おおよそ6~8時間)の睡眠をとることを「推奨事項」としています。小学生は9~12時間、高齢者は長く横になりすぎると健康リスクが逆に高まるため8時間以上にならないこと、とのこと。
――となると、OECD調査の平均では日本人は7時間寝ているのでOKか?と思われますが、実は、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合が男性37.5%、女性で40.6%にのぼることが19年の厚労省の調査結果で分かっています。
約4割の日本人が睡眠不足の状態なのです。
眠ってスッキリ、しっかり休めた感覚が大事
厚労省は睡眠時間について「成人で6~8時間が適切」と推奨しましたが、当然、これには個人差があります。日中にどのくらい身体を使った活動をするか、どの程度のストレスを受けるかといった差もあれば、その人の眠りの深さにもよっても変わります。普段、10時間以上眠ってちょうどよいと感じているロングスリーパーの人が、ガイドに沿って8時間睡眠にしようとするのは、睡眠不足につながりかねません。
また、夏にくらべ、冬の方が10~40分ほど睡眠時間が長くなるということも、厚労省のガイドに載っています。夏は暑くて寝苦しいことや、冬場の冬眠本能などがあるのかもしれません。同じ個人であっても、季節によって適切な睡眠時間は変わるわけです。なので、大切なのは、その人の体感としてスッキリと起きられること。睡眠によってしっかり休めたと感じられることなのです。
寝だめ・昼寝は効果があるか?
目覚めが悪い、寝ても日中に眠くなる、だるいといった感じのある場合は、睡眠不足が積み重なって「睡眠負債」を抱えているかもしれません。数年前に「睡眠負債」というワードは流行語に選ばれ注目を集めましたが、自分にとってベストな睡眠時間を確保した生活を規則正しく送るというのは、まだまだ理想でしかないという人も多いでしょう。「睡眠負債」がたまっていたら、どうすればよいのでしょうか?休日の寝だめや昼寝で解消できればよいのですが、その場合には少し注意が必要です。
寝だめ
寝「だめ」と言っても、実際には眠りを「ためる」ことはできません。とはいえ、寝だめにはならないからといって、時間のある休日でさえ眠らないのはおかしな話です。寝だめについて注意したいのは、体内時計です。あまりにも平日と休日の起床時間が異なりすぎると、体内時計が狂い、飛行機で時差のある地方へ旅行した際に起こる時差ボケ「Jetlag」のような社会的時差ボケ「Social Jetlag」の状態となってしまいます。寝だめのせいで、夜の就寝時間になっても眠くならないような事態は避けたいものです。
厚労省のガイドによると、平日に6時間以上寝ている人であれば休日の1時間ほどの寝だめは、睡眠不足によって寿命を縮めるリスクが減るとのこと。一方、平日の睡眠時間が6時間未満の人では、休日に寝だめをしてもやはり寿命は縮まる、とされています。
このため、睡眠不足を感じるならば、寝だめよりも、平日の睡眠時間自体を長くすることが健康のためだということです。
昼寝
15分ほどの短い昼寝が午後のパフォーマンスアップにつながるといった話は、近年、よく聞かれます。とはいえ、やはり昼寝のせいで夜に眠くなくなってしまうと、本末転倒。夜の睡眠に影響を与えないためには、昼寝は午後3時までの時間で、30分間を超えないことがポイントです。
ただ、30分以内の昼寝では、たまりたまった睡眠負債を解消することはできそうにありません。中には、午後3時までの間で1時間ほど昼寝することをすすめる専門家もいます。
https://toyokeizai.net/articles/-/228327(東洋経済オンライン2018/7/27)
昼寝などをうまく取り入れながら、できるだけ、夜間の睡眠をしっかりとれるように生活を整えることができればよいですね。